第3章 妙な屋敷
○○は窓に手をかけてみた。が、窓は何故か鉄格子がはまっている。まるで刑務所だ。
「駄目だわ!なら、裏手は?!」
走り出す○○を追いかける。だが裏手のドアも、開かなかった。
「何か、ない?!」
辺りを見渡し、帽子かけを手にすると、ドアや窓を叩き出した。
強化ガラスでも使っているのか、窓が割れない。○○はますます狂ったように、鬼のような形相で固そうな物を探しては、ドアや窓を叩いた。
「○○、落ち着け!!」
「落ち着いてなんか、いられないわよ!閉じ込められたのよ?!」
こんな光景に、見覚えがある。それは大学でのことだ。サークルの部屋に閉じ込められた時、こういう行動を起こしたことがあった。後で閉所恐怖症だということを聞かされた。
「○○!!」
俺はあの時と同じように、○○を抱きしめた。
「離して!私、帰りたいの!!」
「俺だって、帰りたいさ!けど、そんなことをしても、○○が疲れるだけだぞ!」
カラン!
○○は持っていた帽子かけを手放すと、子供のように泣き出した。
「もうやだ……。怖いよ…」
「すまない。俺が展望台の道を間違えたばかりに、こんなことになってしまった」
すると○○は顔をあげ、頭を振った。
「ううん。久しぶりに二人きりになれて、嬉しかったの。カラ松、私ね」
ニャーン
「わっ!」
見ると足元に黒猫がいた。光が反射すると、紫にも見える。
「光?そうだ、光だ!」
「何か思い付いた?」
「ああ。何で今まで気づかなかったんだろう?!光だ!電気がついてるんだ!」
「…うん、ついてるわね。でもそれがどうし………あああっ!!」
「わかったろ?!」
「うん!電気がついてるってことは、家の人がいるってことよね?!」
「そういうことだ!ってことは、今までのことは全て、この屋敷の主のイタズラってことになる!」
「ドッキリなのね?!カメラ、どこ?!」
よかった、元気を取り戻したようだ。それにしてもさっきから、何を言おうとしてるんだろう?私ね。その後だ。必ず何かが邪魔をする。1度目は時計に、2度目は猫に。猫………?
「紫の猫?!」
「え?猫ちゃんなら、ここよ?」
猫はいつの間にやら、○○にくっついて甘えていた。