第3章 妙な屋敷
「違う、違う。ザッツライト、その通りってことだ」
「ああ、そっか。それより暖炉で暖まろ?雨に濡れて、冷えてきちゃた」
「それは大変だ。風邪をひいてしまう」
二人で暖炉の前に座る。
「暖かい…」
「ああ、暖かいな」
○○が俺に近づいてきた。肩を抱いて引き寄せると、頭を預けてくる。かわいい。
聞こえるのは柱時計の針と振り子、薪が弾ける音だけだ。
「二人きりの世界、か」
「うん…。あのね、カラ松。私ね」
ボーン ボーン
「きゃっ!」
柱時計が時刻を知らせた。
「びっくりしたぁ」
「暖まったら、家の人を探そう」
「そうね。黙って入っちゃったしね」
「黙ってはいなかったぞ。ちゃんと声をかけたからな」
「あ、そっか」
だいぶ服も乾いてきて、俺たちは家の人を探すことにした。が、ただでさえだだっ広い屋敷だ。慎重にやらなくては。
「まるで、推理小説の世界に迷い混んだみたいね」
「そして誰もいなくなった、か」
「うん。アガサ・クリスティーの」
1階にはリビングとキッチン、食堂。その食堂には大きな絵が飾ってある。
「落葉松と松切草ね」
「ああ、そのようだな」
「でも、嫌な絵だわ。松切草が、落葉松を飲み込もうとしてるみたい」
言われて見れば、そうも見える。松切草の花が多く口を開いて、今にも落葉松を食べようとしているような、奇妙な絵だ。俺は絵を見ないようにした。
「カラ松!!」
「どうした?!」
「これ見て!」
テーブルにはネームプレートが2つ置いてあった。それぞれ名前が書いてある。
カラ松 ○○
「俺たちの名前?!」
「気味が悪いわ!早く帰りましょう!」
「そうしたいが、電話を借りたい」
「もういいよ。車まで、戻ろ?ね?」
○○に促され、ドアに手をかける。
ガチャガチャ
「開かない!」
「ええっ?!」
○○もノブを回すが、駄目だった。
「そんな!!閉じ込められたの?!」
「冗談じゃないぜ!」
体当たりもしてみたが、頑丈らしくびくともしない。何てこった。
「くっ、こんなところで命尽きてしまうのか…。グッバイ、カラ松ガールズ」
「ちょっと!!そんな簡単に諦めないでよ!まだ方法は、あるはずよ!」
こういう時、女は強いな。俺一人だったら、とっくに諦めていた。