第3章 妙な屋敷
「見れば見るほど、大きなお屋敷ね」
「金持ちってさ、何でこうでかい屋敷を持つんだろうな」
「親戚の集まりの時に、入り切らないとか」
「あかずの間とかありそうだ」
「怖いってば」
門は閉ざされている。インターホンを押してみた。
ピンポーン
「………………反応なし」
「お出掛けなのかしら」
ピンポーン ピンポーン
「……………駄目ね」
門に手をかけると、キィと音を立てて開いた。
「無用心だな」
「廃墟だったりして」
「でも、庭は整備されてるぞ」
廃墟なら雑草だらけになっているはずだが、そんなことはなく、綺麗な庭だ。
「雑草がうっそうと生い茂ってるなら、廃墟だろうけどさ」
「あら、お上手」
「めっそうもない」
○○の顔に笑顔が戻り、俺は胸を撫で下ろした。その時、顔に雨が当たった。
「あれ、雨だ」
「え、嘘?!」
とたんにバラバラと大粒の雨が降り始めた。
「きゃあ!」
「うわ!」
急いで玄関に走り、ドアを叩く。
「すみません!誰かいませんか?!」
「道に迷って、困っているんです!助けて下さい!」
二人でドンドン叩くも、反応はない。やはり留守なのだろうか?いや、そんなはずはない。明かりが見えていたから、誰かいるはずだ。
だがどんなに騒ごうが叩こうが、誰も出てこない。
「ええい、開けちゃえ!」
ガチャッ
ドアが開いた。
「「えっ?!」」
開けた俺が一番驚いた。まさか開くとは思ってなかった。
だだっ広いフロアに高級そうなソファー、虎の毛皮の敷物。壁にはこの屋敷の主であろう人物の肖像画がある。年代を感じる柱時計が、カッチコッチと時を刻んでいる。
「やっぱり誰か、いるのね。すみませーん!お邪魔してまーす!」
「すみませーん、電話をお借りしたいんですがー!」
俺も○○も、かなりの大声で言ってみたが、誰も来ない。鍵もかけずに留守にするだろうか?
「見て、暖炉があるわ。火もついてる」
「本当だ。だったらなおさら、誰かいないとおかしいよな」
「そうね。もし耳が聞こえないなら、聞こえる人を置くわよね」
「廃墟の線もないだろうな。柱時計が動いているのが証拠だ」
「あ、そうか。ネジを巻かないと、動かないもんね」
「ザッツライッ」
「辛いの?」
「え?」
「ザ、辛いって」