第2章 松を切る草
しかし、確かに何か車くらいのものが激しくぶつかった跡だ。
しばらく行くと、同じようなへこみのあるガードレールが見えた。
「「えっ?!」」
「ねえ、さっきのと一緒じゃない?」
「ああ、よく似てる。てか…へこみ方、一緒!!」
思わず車を止める。
「まさかな。一本道だったんだぜ?」
そう言いながらも震える手で、目印を付けた。俺のお気に入りの、ラメが入ったスカーフだ。なくすことになるが、今はそんなことはどうでもよかった。
ガードレールに巻き付けて、車を走らせる。
しばらく行くと
「ああああっ!!カラ松、見て!!」
○○が悲鳴にも似た叫びをあげた。それもそのはず、ガードレールにはさっき俺が巻き付けたスカーフが、風になびいていたからだ。
「どういうことだ?!一本道だったぞ?!」
「うん、どこにも曲がってなかったわ。まっすぐな道があっただけ」
車を止め、外に出る。やはり道は一本道で、曲がりくねってもいなければ分岐する道もない。
その時だ。1台の車が猛スピードでこっちに突っ込んできた。
「○○、危ない!」
とっさに○○をかばったのはいいが、勢い余ってガードレールの向こうに転げ落ちる。
「きゃぁあああ!!」
「くっ!!」
こんなところで○○に怪我をさせる訳にはいかない。俺は必死になって体全体で守った。木々や葉っぱがクッションになったのか、どこもぶつけることなく止まった。
「大丈夫か、○○」
「うん、私は平気。カラ松こそ、大丈夫?私をかばっててくれたでしょ?」
「当たり前だ。お前に怪我なんて、させるものか」
○○は照れくさそうな顔をして、
「ありがとう」
一言だけ言った。が、俺を見て声をあげる。
「カラ松、怪我してるじゃない!ああ、こんなに切れてる」
見ると服が破れ、血が出ている。だがどれもがかすり傷で、大したことはなさそうだ。
「大丈夫だ。すぐに治るさ」
「駄目よ、ちゃんと手当てしないと。どこかに何かな………」
○○がある方向に目をやり、絶句した。俺も言葉を失う。
そこに、俺の車があった。
「え…。転げ落ちたよね?」
「なあ。俺たち、夢でも見てるのかな」
「二人で同じ夢を?」
「だってさ。他に説明、つくか?」
「ううん。つかない」