第1章 友達以上恋人未満
この機会に○○との距離を、グンと縮めてやる!
「にんまりしないでよ、気持ち悪い」
「え。俺、にんまりしてたか?」
「うん。ニヤニヤっていうか、ニタニタっていうか。スケベなこと考えてる顔」
………。そんなにひどい顔だったのか。
「だがデートの件、了解した!俺の新車でレッツゴーだ!」
「じゃあ朝10時に迎えに来てね」
「OKだ!」
親指を立てて返事をする。いい暇潰しの相手にされているような気もするが、そんなことはどうでもいい。○○とデートする初めての男になれたんだ!どうだ。うらやましいか、もてない君共!!
その日はあっという間に訪れた。俺はいつものパーフェクトコーデではなく、地味なコーデにした。車に乗り込み、エンジンをかけ、お気に入りの尾崎の歌を流す。
○○はすでに玄関先で待っていた。
「待たせたな、○○」
俺の姿を見て、うなずく。
「うん、よろしい」
「よろしゅうございますか?」
「うむ、苦しゅうない」
「ありがたき幸せ」
そんなやり取りをしては、二人で笑い合う。この瞬間が俺は好きだ。
「見晴らしのいいところに行きたいな」
「じゃあこの間出来た、展望台に行ってみるか」
「うん!それにしても、尾崎好きだね」
「ああ、尾崎は俺の人生の指針だ」
「でもさ、尾崎はキラッキラのズボン、履かないよ?やめたら?自分の顔のプリントTシャツも、ダサいし」
「ダサいのか?!」
「え。あれイケてるつもりだったの?痛すぎ」
「その痛いって、どういうことなんだ?俺は誰も殴ったりしていないぞ」
「あー。そのままの意味じゃなくてね、幻滅するっていうのかな、気持ち的なことなの」
ナビの案内で、案外スムーズにたどり着けた。車を降りるや、展望台に走る○○。そんな○○をかわいいと思う。恋人になれたら、どんなに嬉しいだろう。
「カラ松ー!遅いー!」
「今行く!」
展望台に登ると、噂以上の景色だ。まさに絶景というやつだ。木々の緑のその奥に、海の青が見える。
「おー、すごいな!」
「見に来て正解だね!すっごく綺麗!」
そっと肩を抱き寄せる。○○は嫌がる素振りもなく、そっと俺の肩に頭を預けてくる。おおお…!これはいけるか?
「○○…」
キスしようと顔を近づける。