第1章 友達以上恋人未満
赤塚キャンパスの昼休み。今日も冷たい風が、俺の燃える心を冷ます。
「ふっ。ギルティーウインドだぜ」
「何かっこつけてんのよ!」
パン! 平たい物で頭を叩かれる。
「いてっ!」
見ると○○が持っていたノートで俺の頭を叩いたようだ。
○○は俺の幼なじみで、美人でスタイルもよく、明るい性格。男女共に人気がある。俺はそんな○○が幼なじみだということが、誇らしい。
「こんな寒いのに外でコーヒー?風邪ひくよ?」
「ハートがヒートしていてな。冷ましていたのさ」
「はいはい、分かったから入ろ?」
俺の手を引いて中に入る。
「もう、こんなに手が冷たい!」
○○の温かい手が俺の手を包む。通りかかった男たちの羨望の眼差しが俺を射る。ふふーん。うらやましいか。残念だが、代わる気はないぞ。
「何か用じゃなかったのか?」
「あ、そうそう。あのね、今度の日曜、空いてる?」
「え、ああ。空いてるが?」
「前からカラ松がデートに誘ってたでしょ?今度の日曜空いたから、どうかなって思って」
「そ、そうか」
来たぜ、カラ松ガール!!何度も誘ってた甲斐があったぜ!!ワオワオワーオ!!今までの努力が、やっと報われる!!
「……ちょっと、聞いてる?!」
「ふぇ?!あ、ああ、すまない。もう一度言ってくれ」
「全く…。自分に酔いしれるのは後にしてよね。カラ松、車運転するでしょ?新車買ったんだよね?乗せて欲しいなー」
「もちろんだぜ、マイハニー」
パン! またノートで叩かれた。
「だ・れ・が・ハニーなわけ?まだ付き合ってないでしょ?」
「…はい」
ちぇっ。既成事実作ろうと思ったのに。
だが、ついに!ついにこの時が来たぜ!さぁて。このデート、本物の愛にまで育つかな?
当日は俺のスペシャルで、パーフェクトなコーディネートを披露してやろう。
「あ、カラ松」
「んー?」
「その日は普通の格好してね。ラメとかスパンコールとかはいらないから」
「お、オーケー、分かった!」
ああ…。パーフェクトコーディネートよ、さらば…。
「あのさ。カラ松はあのコーデを気に入ってるみたいだけど、光が反射するから危ないのよ。交通事故が起こるわ」
「えっ!そうだったのか。アンダスタン、あのコーデはやめよう」
そんなに危険だったとは。