第7章 星空の下
俺は屋敷が燃えるのを、ただ呆然と見ていた。
生まれ育った屋敷。兄弟から離された寂しさもあった。だが、○○と出会えたのは、そのおかげだ。しかも大学まで行かせてもらえて、一体何を恨んでいたのだろう?いや。もしかすると、罪悪感からかも知れない。俺だけがこんなに幸せになってしまって、申し訳ないと思っていたのかも……。
やがて屋敷は、大爆発を起こした。ブラザーたちと母さん、そしてシャドウと共に…。
その爆発で飛ばされたのか、あの人形が○○の足元に飛んできた。人形にはかすかな、それでいてたどたどしい字で、
『ごめんね』
とあった。○○は人形を抱きしめると、涙をこぼして言った。
「私が閉所恐怖症になったのは、この屋敷に来た時におそ松さんたちに突っかかった時、私のお母さんに狭い部屋に閉じ込められてからなの。その時この人形があって、ずっと抱きしめていたわ。言わばこの人形が、私の恐怖心を和らげてくれたのね」
「そんなことがあったのか。それはきっとブラザーたちからの、プレゼントだろう」
「うん。私もそう思う。……見て、カラ松」
「ん?」
言われて○○が空を見上げるのにならう。
「おお……。すごいな」
満天の星空だ。中でも4つの星が、美しく輝いている。
「ブラザーたちか?1つ足りないな」
「隣で控えめに輝いてるのが、カラ松のお母さんね。あっ!」
「どうした?」
「ほら、松切草が!!」
松切草があった庭は、そのすべてが都忘れの花になっていた。
「都忘れの花言葉、知ってる?」
「いや。何て言うんだ?」
「別れ」
「別れ、か。物悲しいな」
「それともう1つ」
「2つあるのか」
「また会いましょう」
俺の目から涙が溢れる。ブラザーたちが、再会を約束してくれているように思えたからだ。
「ブラザー!!」
○○は俺を抱きしめて、泣きながら言った。
「カラ松、もう一度言うね。結婚しよ?私、頑張って6人子供産むから」
「6人もか?」
「おそ松さんたちと、お母さん。6人」
「なら、俺も頑張らないとな」
「また会いたいもの。今度は、家族として」
「ああ、そうだな。……さあ、帰ろうか。俺たちの家に」
「うん」
腕を組み、歩き出す。
「なあ、こんなことって、あるか?」