第6章 シャドウ もう一人の自分
「初めて会った小学生の時、転んで泣いてた私を慰めて、絆創膏を貼ってくれたよね。あの時から私、絆創膏を持ち歩くようになったの。雨に濡れてた捨て犬がかわいそうだからって、差してた傘を置いて帰って、風邪をひいたこともあったよね」
「あの時は、○○が看病してくれた…」
「カラ松、大好きよ。愛してるわ…」
○○が口付けてきた。とたんに俺の脳裏に、○○との思い出がよぎる。
「俺の……愛しい○○!!マイハニー!マイエンジェル!マイミューズ!」
すると俺の中のシャドウが、苦しみ出した。
「ぐぁあああ!!や、やめろ!!痛い台詞を、吐くな!!」
「カラ松、続けて!!」
「俺の冷えた心に光を与えてくれる、そう!まさにヴィーナス!!いや、俺の心を惑わすギルトレディー!きっとブラザーたちは、お前の放つ光に耐えられなかったんだろう!許してやってくれ!そして俺も許そう!」
「なぜ許す?!許すことなど出来ぬ!!」
「ふっ、ノンノン。当時子供だった兄弟に、何の罪があろうか?!」
「カラ松」
「なんだい、マイハニー」
「卒業したら、結婚しよ?私、頑張って5つ子産むわ!それで、おそ松さんたちの名前をつけるの。今度こそ、みんなで幸せに暮らそう?!」
「結婚……!!Ohマイリルガー!5つ子でなくとも、5人作ればいいさ!」
「おそ松さん…。ううん、お兄さんたち。私たちの子供になって?!」
『○○ちゃん…!ありがとう!必ず○○ちゃんのお腹に入るよ!』
「うぉおおおおお!!回り出したぜ、幸せの歯車!!」
「ぅ……ぐぁあああ!!」
俺の体から、黒いもやのような物が出てきた。
『あれがシャドウよ!』
『よし!後は俺たちに、任せろ!!』
兄貴たちが、七色の5つの発光体となって、シャドウを取り囲んだ。
『松野家家訓!』
『やられたら、やり返せ!!』
『いっくぞぉおお!!』
『逆転サヨナラホームラン!!』
『カラ松兄さん、○○ちゃん。幸せにね!』
「お前たちもだろ、ブラザー?!俺たちの子として、産まれてこい!!」
やがて、屋敷が燃え始めた。恐らくさっき爆発したことで、火がついたんだろう。床に降りていた俺は○○を抱き抱え、屋敷の外に出た。
「俺の家が…焼け落ちる……!」