第6章 シャドウ もう一人の自分
「持って帰るのを見られたら、またおそ松さんたちにいじめられると思ったから…。だから、置いて帰ったの」
「すまない、兄弟たちがひどいことをした」
「ううん。あの時は、すごく悲しかった。でも、今になってようやく、おそ松さんたちの気持ちが分かるようになったの。私だって、カラ松が誰かに連れて行かれて他の人がきたら、きっとその人に冷たく当たるだろうな」
ああ、○○は何て優しいんだ。こんな優しい○○を、あいつらは…。
俺は立ち上がり、ドアを開けてロビーに出た。そして大声を上げた。
「お前ら……!!お前らは俺の女に、何をした?!言ってみろ!!」
そのとたん、今までしっかり閉じられていた扉や窓が、一斉に開いた。
「出てきやがれ!!」
屋敷が揺れる。柱時計が倒れ、中から光の玉が出てきた。
「チョロ松か?!よくも俺の○○を!!」
『カラ松…。僕らだって、彼女がいなくなってから反省したんだよ?それに僕ら、何度彼女のシャドウに殺されそうになったか』
「反省して、それで終わりにするつもりか?!ふざけるな!!○○だけが悪いように言いやがって!!シャドウは、本人の意思とは関係なく超常現象を起こすんだろ?!なのに全部、○○のせいにするのか?!」
『お前は利用されてるんだ』
ドカーン!!
何かが爆発したらしい。だが、関係ない。
「お前ら全員、俺が許さん!!」
屋敷中の物が宙に浮かんで、屋敷の壁やドアにバンバンと当たる。俺は何やら、おかしくなった。おかしくて仕方がない。
「くっくっくっく。お前ら、○○のシャドウの力で、何にされたって?パチンコ玉?バット?携帯?柱時計?猫?はっはっは!とんだお笑い草じゃないか!」
『ひどいよ、カラ松兄さん!!』
「ひどいだと?お前らのせいで○○がシャドウになったのに、それを○○のせいにして、俺にはひどいと言うのか?!俺を一人にしたくせに!連れて行かれる時、引き留めもしなかったくせに!!」
『カラ松!それは違うぞ!!』
俺の怒りは、とどまるところを知らない。
「全部……、全部お前らが悪いんだぁああああ!!」
「やめて!!」
見ると○○が二階の廊下で俺を見ていた。
俺の体が宙に浮いているからだ。
「カラ松!やり過ぎよ!」