第134章 ◇第百三十三話◇伏せられた作戦と女型の涙【女型の巨人編】

「口頭伝達です！！」

不意に、切羽詰まったような声が響いた。
嫌な予感を連れてやってきたのは、右側を担当している調査兵だった。

「右翼索敵壊滅的打撃！！右翼索敵一部機能せず！！
　以上の伝達を左に伝えてください！！」

最悪な状況を伝える口頭伝達だった。
ハンジさんの指示でニファが左へと駆けていく。
それを確認して、口頭伝達を伝えてくれた調査兵も自らの持ち場に戻って行った。

「壊滅的打撃ってなんですか！？一部機能せずって…っ！？
　それってー。」
「堪えるんだよ、。私達はただ前に進むんだ。」

荷馬車の上で狼狽える私を見もせず、ハンジさんは本当に前だけを見て走り続ける。
荷馬車護衛班の調査兵達、みんな、同じ顔をしている。
何か、覚悟を決めている顔ー。
ドンー！大きな音がして、振り返る。
離れてはいるが、右側後方で黒の煙弾が上がった。奇行種だ。
索敵が機能していないせいなのか、陣形の深くにまで巨人に入ってこれているようだった。
すぐに、モブリットさんが黒の煙弾を撃つ。
最悪だ。
索敵も機能していないところに奇行種だなんてー、最悪の状況以外の何ものでもない。

「私は行きます！！右翼側に・・・・あ・・・。
　テュラぁぁぁああンッ！！！」

荷馬車の上に立ちあがった私は、頭を抱えて、愛馬の名前を悲鳴のように叫んだ。
馬がないのなら、右翼の仲間を助けにも行けないではないか。

「は私達と行くんだ。
　君が望めばどんな危険な場所にも連れて行ってくれる優秀な馬を奪ってでも、
　何が何でも連れて行くよ。の力は、未来に必要だ。勝手な行動はさせない。」

ハンジさんの言葉にハッとする。
モブリットさんも、ケイジさんも、みんな、知っていたのか。
長距離索敵陣形の配置になったときから、いや、もしかしたら、もっと前からー。
こんな最悪な状況に陥ることをー。

「未来に必要なのは…、私だけじゃない…。」

拳を握り、小さく呟く。
大きな声で叫べなかったのは、違うと声高に叫べなかったのは、分かっていたからだ。
ハンジさん達もそんなこと、引き裂かれた胸を捨ててしまいたいくらいに、理解しているのだということをー。