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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第108章 ◇第百七話◇霧と雨が阻む帰り道【恋の行方編】


土砂降りの雨は、巨人に味方した。
濡れた睫毛で前がよく見えないし、それにー。
巨人の背中に飛んだ私の足が、雨に濡れて滑った。
バランスを崩して、地面に落ちる。

「い…っ。」

痛みに顔を歪め、なんとか起き上がる。
目の前にいる巨人と目が合った。
気持ちの悪い笑顔を浮かべたまま私を見て、そしてー。
白い蒸気を上げている。
なんとか、全て倒し終えた。

「さぁ、帰ろうか…。」

戻って来たテュランの鞍に手をかけた私は、鐙に足をかけようとして気づいてしまう。
もう、馬に乗る体力すら、残されていないー。
このままここで、体力が戻るまでどこかで身を隠そうか。
そんな考えも過ったが、テュランは脚に怪我を負っている。
出来るだけ早く治療させてあげなくてはー。

「ごめんね、テュラン。私はもうここまでだ。」

いつの間にか鞍にしがみついていた私の身体を、ゆっくりと離す。
置いて行かないでー。
心と頭が、違うことを叫んでいて、頬を流れ落ちていくのが、雨なのか涙なのか、自分でも分からなかった。
そんな私の気持ちを察したのか、テュランの鼻が私の頬を撫でる。
あぁ、私は、テュランのこの仕草が凄く好きだった。
凄く、好きだったー。

「このまま街を抜けて走れば壁に着く。その壁沿いに走っていれば、
 きっと誰かがあなたの鞍を見て、野生じゃないことに気づいてくれる。
 生きてね、テュラン。今まで何度も私を助けてくれてありがとう。大好きだよ。」

さようならー。
最後に優しく愛馬の首を撫でて、彼の腹を両手で勢いよく押した。
テュランが走り出す。
なんとか身体を支えていた脚は震えながら力を失い落ちていく。
濡れた地面に膝をつき、私は天を仰いだ。
もっと体力作り頑張ればよかったかなー。
でも、仲間に殺されかけながらも、なかなか頑張ったと思うのだ。
諦めなかったし、ここまで来れたしー。
私の頬を生温い雨が、止めどなく流れていく。

(あぁ…、会いたいな…。)

ただそれだけを求めて、ここまで走り続けてきた。
でも、もう二度と会うことは叶わない。
もう何も見たくなくて、私は目を閉じた。
今頃、何をしているんだろう。
雨を嘆いて、つまらなそうな顔をして、掃除でもしてるかな。
頑張ったんだよー。
褒めては、くれないな、きっとー。
ごめんなさいー。
ー。
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