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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】


「それだけでいいのか。」

言葉の意味が分からず、私は首を傾げる。

「俺はもっと、お前と一緒にここに生きてることをちゃんと確かめてぇ。」

リヴァイ兵長はそう言うと、握りしめる手を自分の方へと引っ張った。
指が絡んだままの私は、前のめりに体勢を崩して、リヴァイ兵長の胸板に倒れ込んでしまう。
血が滲む包帯に頬があたり、私は焦って身体を離そうとしたけれど、リヴァイ兵長の腕がそれを許さなかった。

「ごめんなさー。」
「俺の心臓の音は聞こえたか。」

リヴァイ兵長は、私の頭と腰に手を回し、傷だらけの自分の身体に強く抱き寄せた。
規則的な鼓動が、私の耳に響く。
それは、とても優しく、力強く、愛する人が生きていることを私に教えてくれた。
あぁ、生まれてから今まで私が聴いた中で一番感動的で、きっと私がこの世で最も愛おしい音だ。

「聴こえます。」

もっと聴いていたくて、私は、リヴァイ兵長の腰に手を回した。
傷が痛まないように優しく、そっと触れれば、私を抱きしめるリヴァイ兵長の腕の力が強くなった。

「俺にも聞こえる。すげぇ、速ぇ。
 お前も熱があるんじゃねぇのか。」
「…違いますよ。
 いいじゃないですか。好きだから、ドキドキするんです。」

少しバカにするような言い方に、ムッとした。
そんな感情さえ、すごく嬉しかった。

「あぁ、そうか…!」
「わざとですよね、絶対に。」
「さぁ?」

悪戯な声が笑っているようで、私は自然と笑顔になる。
昨日の夜までは、この世界は地獄だと信じて疑わなかった。
全てのものが色を失って、白黒の世界で、リヴァイ兵長だけが冷たい氷に覆われていて、この世界のすべてが、私がリヴァイ兵長に触れるのを赦さないみたいだった。
でも、私は今、心が温かい。幸せを感じている。
たったひとり、リヴァイ兵長がいるだけで、私の世界はこんなにも色づくのか。
こんなにも、愛おしい世界にー。
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