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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第86章 ◇第八十五話◇真実の愛を見た【恋の行方編】


「さんっ、怪我はー。」

足の速いジャンがすぐに荷馬車の元へ駆けつけた。
声を掛けたが、言葉は続かなかったようだった。
それは、リヴァイの容態を心配して、声を掛けようとしていたアルミン達も一緒だった。
荷馬車の上で、リヴァイは仰向けに寝かされていた。
着ていたと思われるタキシードは、ボロボロの状態で荷馬車の隅に置かれていて、防寒のためにかけられた毛布の下から僅かに覗く身体は、肌が見えないくらいに包帯を巻かれていた。

「死なないって、言ったじゃないですか…。
お願い…、私を置いて…、いかないで…。」

血の気のないリヴァイ兵長の頬を、はただひたすら、愛おしそうに、愛おしそうに撫で続けていた。
切なく震える声は、他の誰も触れてはいけない、とリヴァイだけのものでー。

「愛しているの…。
 貴方のいない世界では…、生きていけないほど…。」

の頬を流れる涙が、リヴァイ兵長の唇に落ちる。
ただ、それだけだ。唇を重ねたわけではない。
それなのに、とても官能的で、熱い接吻を交わしているようだった。
まるで、彼らにもらたす希望のように雲の切れ間から差す一筋の光が、の涙を宝石のように輝かせる。
雨上がりの白い霧さえ、2人を優しく包み、神様の寵愛を受けているみたいで、とても幻想的だった。
アルミン達は、まだ新兵と呼ばれる歳で、長く生きてきたわけではない。
でも、こんな残酷な世界に産み落とされたせいで、目を背けたくなるような地獄をもう幾つも見てきた。
そして、ここで苦しむもリヴァイも、この残酷な世界の犠牲者に違いなかった。
それでも、それでもー。
2人が見せるその光景は、今まで生きてきて見たどんなものよりも儚く、切なく、美しかったー。
胸が張り裂ける、とはこういうことかと、若い彼らが初めて知るほどにー。

「どうか…、助かってほしい…。リヴァイ兵長も、も…。」

ライナーから零れた言葉、それがアルミンの、そこにいる全ての人の願いだろう。
ライナーの隣で、ベルトルトが流れる涙を必死に腕で拭いながら、首を縦に振っていた。
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