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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第56章 ◇第五十五話◇もう二度と戻れない日常【恋の行方編】


「こっちはもう準備終わってるんだろー?先に始めちまってもいいかー?」

数名の先輩兵士達が、最初に準備を終わらせた場所から叫んだ。
訓練を始めるにはまだ少し早いが、準備は終わっているし、自主練を始めてもらっても特に問題はない。

「はーい!どうぞー!」

私は、頭の上で大きな丸を作って返事をした。
早速、訓練を始めたやる気満々の先輩兵士達に感心しつつ、私は面倒くさい訓練準備を続ける。
巨人の張りぼてはなかなか重たいのだ。
筋力強化になると思って頑張れ、と昨日が準備当番だったペトラに言われている。
確かに、私は他の兵士よりも筋力と体力が劣る。
兵舎での生活のどんなことも、兵士としての鍛錬だと思って頑張るのは必要だと思う。

「よし。これで終わりかな。」

最後の張りぼても設置し終わって、ふぅと息を吐く。
倉庫の鍵を返しに行くついでに準備終了を分隊長達に報告するために、フロリアン達は訓練場を出て行った。
残った私は、木の幹に寄りかかりながら、ほんの数か月前にこの場所に当然のようにあった日常を思い出す。

『どっちが鍵返しに行くか、ジャンケンで決めよう!』
『え~、やだよ~、ルル、強いんだもんっ。』
『はい!じゃん、けん、ぽんっ!』
『あ~、ほら~、また負けた~…。』
『いってらっしゃーいっ!』

いたずらっ子みたいな可愛らしい笑顔で大きく手を振っているルルの姿が、そこに見えた気がした。
もしも今、彼女がここにいたら、私に何て言っただろう。
元気出しなよ、とかそんな言葉じゃなくて、きっとそう、彼女なら、安心する腕の中に私を抱きしめてくれたんだと思う。

『大丈夫、大丈夫だよ。私はどんなときもの世界一の味方だから。』

優しいルルの声を必死に思い出す。
ルルはきっと、今も私の隣にいる。私はきっとひとりじゃない。
ヒルラだって隣にいて、初めての大失恋に打ちのめされてる友人が前を向くのを、きっと辛抱強く見守ってくれている。
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