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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】


「私じゃ…、ダメなの…?」

ジャンの顔を見上げているはずの私の脳が見せてくるのは、あの日のリヴァイ兵長のそっけない背中だった。
鼻の奥がツンとして、潤んでいく瞳の向こうにいるジャンを滲ませる。

「えっと…、色っぽいっすよ…。すごく。」

可哀想だとでも思ったのか、ジャンが躊躇いがちに口を開いた。
真っ赤な頬はお酒のせいなのだろうか。
それともー。

「ほんとう…?」
「本当っす。だから…あの、手を放してもらって、いいすか?」
「…なんで?」
「なんでって、それは…。えっと…。」
「私と、シたくないの?」
「シた…っ!?」

身体中の血が一気に顔に集まったみたいに真っ赤になったジャンは、混乱しているみたいだった。
でも、私は、彼の事情とか気持ちとか、もうそんなことどうだってよかった。
女としての自信を取り戻したいだけなのか、それとも、リヴァイ兵長に全然相手にされていないことを思い知ってやけくそになっているのか。
もしかしたら、ただの酔っぱらいなだけなのかもしれない。
お酒での一夜の過ちなんて、珍しいことじゃない。
どっちにしろ、ぼんやりする頭にすらリヴァイ兵長の顔が浮かんでしまうようなどうしようもない私には、今のこの状況を説明する言葉なんて必要なかった。
むしろ、ない方が都合が良いー。

「いいよ。」

私はそう言って、ジャンの腕を掴んでいた手をそっと放した。
ようやく自由になったはずの彼の身体は、鎖にグルグルに巻かれているみたいにピクリとも動かない。
悪い女から逃げることが出来ない可哀想なジャンは、お酒のせいなのか、別に理由があるのか、頬を赤く染めて、額に汗を浮かべている。
さっきまで忙しなく左右に揺れていたジャンの瞳は、とろんとした私の瞳をまっすぐと見据え、真意を確かめようとしているようだった。

「来て。」

ジャンの腰に触れた私の手をゆっくり落とすように足を撫でて、馬乗りになるように促す。
まるで恐ろしい魔女に操られでもしているかのように、硬直していたはずのジャンの身体が動き出した。
その間もずっと、見えない鎖に瞳を繋がれたジャンは、思いつめた顔で私の瞳を見下ろす。
そして、私の腰の上に馬乗りになると、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
上下に動く喉仏を見ながら、あぁ、本当に子供じゃなくて男の人なんだーと今さら思う。

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