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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第51章 ◇第五十話◇世界一幸せな部下【恋の行方編】


私は、急遽、ストヘス区へ出張になったリヴァイ兵長と一緒に馬車に乗っていた。
エルヴィン団長の元へ書類を提出しに行ったときに、たまたまそこにいたハンジさんから、私がストヘス区へ行きたがっていたことを知り、ついでに一緒に行くかと誘ってくれたのだ。
泊りがけの出張なので、今日はリヴァイ兵長と憲兵団の宿泊施設に泊まる予定だ。
私は家族の元へ帰ってもいいしと言われたが、断った。
今度こそ本当に兵士になると覚悟を決めて調査兵団に戻った。命を懸ける覚悟は出来たけれど、そのうえで家族に嘘を吐く強さはまだ、なかった。

「私、ここの眺めすごく好きなんです。」

窓の向こうには、見渡すかぎりの草原が広がっている。
時々、野生のウサギが通り過ぎて行ったり、鳥が小川をつついて魚を探していたりする。
自由な彼らの生活ぶりがとても幸せそうで、羨ましくもなる。
窓を開けると、気持ちのいい風がふわりと入ってきた。

「そういえば、いつもこのあたりになると、お前は窓を眺めていたな。」
「トロスト区にはこういう風景があまりないからなんですかね。
 狭いと思ってた世界をこんなに広いんだなぁって感じられて、ワクワクするんです。」
「降りるか?」

リヴァイ兵長は疑問形で言った割には、私の返事を待たずに馭者に止まるように伝えた。

「いいんですか?急いでるんじゃないんですか?」
「待たせてりゃいい。それより、俺は腰が痛ぇ。」

リヴァイ兵長は適当に答えて、さっさと馬車を降りた。
さりげなく自分のせいにしてくれた優しい背中を追いかけて、私も草原に足を踏み入れる。
本当は、この広い草原を歩いてみたいと思っていた。
小川沿いを歩きだしていたリヴァイ兵長の隣に並ぶと、何かが水を跳ねた。

「あっ!魚が飛びましたよっ!見ました?!」
「あぁ、見えた。捕まえて、塩焼きにして食うか。」

立ち止まったリヴァイ兵長は、睨むように小川を見据えながら、兵団服の袖口をめくって腕を出した。

「…冗談ですよね?」
「冗談だ。」

リヴァイ兵長は、さっきと同じトーンで言って袖口を元に戻した。
冗談も含めて、ずっと真面目な顔をしているから分かりづらい。
それがまた可笑しくて、私は笑う。

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