第3章 時代の革命児
子供ができたら売り飛ばし、金を手に入れる。そんな家に生まれたから、人と喋ることにも抵抗を覚えてしまったようで、女性がご飯をあげようとしたら睨み付けるように鋭い眼光を向けてきたという。だが食わねば生きてゆけぬ、その子供はついに食事した。結果その子はここに居すわり家には入らず、外壁の隅でひそひそと生きているそうだ。
「そんなことが…」
子供を見ながら呟いた。母親らしき女性も、心配そうな表情を浮かべ隅の子供を見た。ボロボロな服を着ていて、痩せている。
「あの子はずっとあのままなのでしょうか…」
子供たちは俺たちを無視してまた遊びだした。女性の言葉は遊び声にかき消されるような小さい声だった。
俺はその子供に向かって歩いて行った。足音をたてないようにする訳ではなく、ただ堂々と。俺の足音に気付いたのか、足を組み顔を伏せていた子供がこちらを向いた。
雪のように透き通る白い肌。海のように輝く青い瞳。黄金色に煌めく稲穂のような黄色い髪の毛。春に舞う桜吹雪のような色の唇。
驚くほど美人な面をした女の子だった。
誰とも知れない奴が近づいて来たことを警戒してか、鋭い冷眼を見せた。しかしそこから動こうとはせず、どれだけ近づいても座ったまま睨み付けてきているだけだ。すぐに真正面に立つことができ、俺はしゃがみ込み同じ視線に座った。改めて見ると、美しい顔に声をつまらせる。一瞬にしてその美しい碧眼に魅了されていた。
邪念を打ち払い、少女と会話しようと試みた。
「キミ…名前は?」
「………」
微かに吹いていた冷たい風が止み、静寂が訪れる。しかし、何故か静寂が心地良く感じてしまう。
「…俺は司馬頼継って言うんだ。元々農民の子供でね。キミほど辛い環境ではなかったが、多少は生活が厳しかったよ。小さい頃に…大体キミと同じくらいだったかな…。領主の信秀様が俺を拾ってくれたんだ。最初は小者として仕えていたけど、書物を読み武術を習い、今では一人の姫君に仕えている。結構充実した人生を歩めている気がするよ」
ただただ一方的に話す。こういう子には、自分の情報を混ぜ込み話すのが効果的だろう。警戒しているならば、最初から自分のことについて喋るのが良い。
すると少し心を開いてくれたのか、少女が口を開いた。