悪役になりたいので、まずはフリから始めます。[鬼滅の刃]
第2章 悪役になりたい柱の話。
はっきりと言おう。私の家は超が付くほどの金持ちだ。親が会社で成功したらしい。
私は親に「あなたはいつも笑顔でいればいいの」。そう言われてきた。「優希が笑顔で過ごせるなら…」と親は思っているんだろう。そんな勘違いをしていた私は笑顔で頷いていた。
勘違いだと気づいたのは十三の時。
ある日の夜中、偶々目が覚めた私は「水を飲もう」なんて思って居間の戸を開けようとした。…ここから、よくある定番の言葉が聞こえてくるのだった。
「…ほんと、優希がいつも笑顔でいてくれてよかったわ。お陰で私たちの印象もうなぎのぼりよ!」
…母上?
「そうだな。あいつは何をやらせてもできなかったからな。顔だけでもよくてよかった。あの顔を生かして、いい株や人材が買えるんだからな」
…父上?
「あいつを使ってもっと沢山の儲けが出たら、優希を売って、もっと使えるやつを養子として迎えたいんだが…」
「いい考えじゃないの!それなら私たちに得しかないわ!さすが敏腕社長のあなた!私…」
「あなたはいつも笑顔でいてくれればいいのよ」
そう言ってくれた母親はいなかった。いや、元々いなかったのだ。
そしてその考えに思い立った瞬間、二つのことに気づいた。偽りの愛情をもらっていること。そして私はただの道具のように思われていたことに。
息ができなかった。
頭の中が真っ白になった。
もう何も考えられなくなった。
翌日から私は、感情を押し殺して生活した。どんな時でも笑顔でいる、それこそ人形のように過ごした。
そしてこの頃、私はいつの間にか「負の感情」を感じ取れるようになった。
二年後のとある朝。いつものように一階に降りる。内心を悟られないように、笑顔で。そして、
「おはようございま…す」
居間の戸を開けた時、そこには想像を絶する世界が広がっていた。