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碧空(あおぞら)【ダイヤのA】

第5章 ⑤


「良かったら夜食にどうぞ。じゃ、今度こそ。」
「ああ…あり、がとな……」

小さなその声は或いは永原には届いていなかっのかも知れない。それでも永原が軽く触れた手が温かい熱を持つ。さっきまで冷やされていたエネルギーゼリーは冷たいのに。



















「沢村~入るぞ。」

寮の5号室。沢村の部屋をノックすると遠慮なくガチャリとそのドアを開けた。
そこには床に寝転がり漫画を読んでいる沢村とゲームしている倉持。浅田はまだ自主練しているらしい。

「キャップ?何すか?」
「さっきは怒鳴ったりして悪かったな。これ、詫びだ。」
「え…ありがと…ございます……」

さっきコンビニで買ったスポドリを差し出すと沢村は困惑したようにそれを受け取った。

「明日、ナンバーズ練習するからな。」
「えっ?」
「しっかり肩休ませておけよ。」

そのまま部屋を後にした御幸。残された沢村と倉持は顔を見合わせた。

「……こわっ…こわっっっ!!何すかあれ!?逆に怖いんですけど!」
「俺も怖ぇわ!!あんな上機嫌な御幸見たことねぇよ!」
「明日、雪降りますかね…?」
「いや、槍かもしんねぇぞ……」

沢村と倉持が怯えている頃、御幸はもう一度ビデオを見直していた。
そして、エネルギーゼリーの蓋を開けた。まだ冷たい。だけど何だか熱くてくすぐったい。

それでも不思議なことに今度は集中できる。課題が面白いくらいに見えてくる。練習メニューが溢れてくる。

御幸はまだ気付いていない。その顔が綻んでいることを。この気分の高揚の正体を。そして、初めて知ることになる苦しみを。
     
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