第4章 ④
新学期が始まって早1ヶ月。GWを迎え学校は暫しの長期休み。
だけど、野球部に休みなどない。夏の本選に向け遠征と対外試合。
御幸の心は落ち着いていた。野球のことだけを考え、野球に向き合う日々。野球を始めてからずっとそうしていた日々。何ら変わらない。変わっていないはず……
なのにこの1ヶ月は何かが違った。心の凪ぎが乱される日が何度もあった。
それでもユニフォームを着れば、グラウンドに立てば、沢村の、降谷の球を受ければ凪いでいた。
これが何なのか…御幸には見当も付かない。
野球だけの日々。野球にだけ向き合い続けた日々。
もちろん健全な17歳の男子高校生。可愛い女の子を見れば素直に可愛いと思い、いつか自分も恋愛なんかもするのだろうか?と思うことも少なからずあった。
だけど、今の御幸にとって野球より大切な物はない。野球だけがただ一つの宝物。
だから恋愛する気なんてさらさらない。告白してくる女子がいても断り続けたのもその為。
そして、心乱されることもなく野球を続けていた。