第1章 来訪者
男は騒ぎを起こした男を連れて、コインを換金して帰って行った。
「よくやってくれた」
「オーナー!ありがとうございます」
「他は大丈夫か?」
「はい、今のところ問題ありません」
「よし。引き続き見張りを頼むぞ」
「はい」
カラ松はSPの背中をポンと叩いて他の見回りをしに行った。
オーナーであるカラ松にほめられると給料が上がるという噂がSPの間にあり、SPたちはそのために一生懸命になる。各エリアに数人、カラ松の警護に数人がついている。
一等地のカジノに相応しく、客も上品な人が多い。それゆえに、騒ぎはすぐに分かる。
さっきの騒ぎで館内はすっかりざわついてしまった。
「皆様、大変失礼いたしました。オーナーである私松野カラ松、心よりお詫び申し上げます。先程の騒ぎを起こした者はすでに退場しておりますので、どうぞ遊戯をお楽しみ下さいませ」
カラ松の一言で館内は落ち着きを取り戻した。そしてSPたちに告げる。
「あの男、次は出禁にしろ」
「yes、my load」
やがて夜も更け、人がまばらになる頃、カラ松は外に出ていた。
「月明かりが美しいな。ネオンの輝きも美しいが、自然には勝てない」
そこへバタバタと足音がして、一人の女が走ってきた。SPがカラ松を囲んで警護する。
「誰かその女を捕まえるザンス!」
後ろから追いかけて来た、出っ歯の男が叫ぶ。SPの一人が女を止めにかかった。女がそれに気付き、地を蹴った。SPも負けじと追い詰める。体力の差だろう、すぐに女は捕まった。
「ちょっと!離してよ!!」
「女。お前、何をしたんだ?」
「何もしてないわよ!あいつが私を売り飛ばそうとしたの!」
「うっひょっひょ!生娘は金になるザンスからね。」
カラ松は葉巻を出っ歯に投げた。
「女はお前の商品じゃないぜ」
「部外者は口出し無用ザンス。その女の親が借金のカタに寄越したザンス。言わば、ミーの物ザンス」
「嘘よ!無理やり連れてきたくせに!」
「はーーーーー。借金はいくらだ?」
「ざっと400万ザンス」
するとカラ松は小切手を出し、金額を書いた。
「これでいいのか?」
SPを通じて小切手を渡す。
「うっひょっひょ。これなら文句はないザンス。女、この男に感謝するザンスよ」
出っ歯は去って行った。カラ松は女に言い放つ。