第7章 木漏れ日の下で(新開隼人)
高校一年生の秋、新開くんはたまたまこの裏庭に来ていた。
そしてその頃から裏庭での読書が日課となっていた私を見かけた。
なんども話しかけようとしたがあまりにも様々な表情を浮かべ楽しそうに読書をしている私を見て邪魔はしてはいけないと思ったそうだ。
三年になり同じクラスにはなれたものの、なんだか教室では話しかけづらかったらしい。
「だから、ウサ吉がおめさんの元へ行った時、柄にもなく運命ってやつを感じたのさ」
「そ、そうだったんだ」
「でも、他に好きな奴がいるんだろ?だったらオレは応援するよ」
「ち、違うの!さっき気がついたばかりで…なんて言ったらいいのかわかんないんだけど…私が好きになったのは、新開くん…みたいです」
そういうと新開くんは一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔に戻った。
そしてゆっくりとウサ吉を地面に放すと私をギュッと抱きしめた。
「おめさん、可愛すぎやしないか。食べちゃいたくなるよ」
その言葉に私の体温は急上昇している気がするが新開くんはお構いないだ。
すっと身体を離し私の目を真剣に見つめる。
「茉璃、オレと付き合ってくれるかい?」
「っ!こんな私でよければ!」
そう答えると新開くんは私の顎へと指を添えクイっと持ち上げる。
そしてその柔らかそうな唇を私の唇へと重ねた。
お互い唇を離して笑い合い手を繋ぐ。
するとウサ吉が2人の間にやって来て2人の重なった手の上にちょこんと頭を乗っけた。
「ウサ吉はオレらの恋のキューピットだな」
「うん、そうだね」
私たちはもう一度顔を見合わせて笑い合う。
好きになったのも恋人になったのも新開くんが初めて。
きっとこれからもたくさんの初めてが訪れるだろう。
その全てを新開くんとともに歩んでいきたい。
私は心の中でそんなことを思うのだった。
fin.