第1章 不思議なやつ(荒北靖友)
「もう…はっきり言わないとわかんない!?私は、私は靖友のことが」
言い終える前にオレは彼女の口を手のひらで塞ぐ。
(ここからは、オレから言わねーと…男じゃねェ!)
「待て、こっから先は…その…オレが…」
オレが口籠もっていると、口を塞がれたままの彼女が苦しいとオレの手を口元から剥がす。
「ちょっと!靖友、苦しいじゃない!」
「ダァァァァ!!うるせーな!!!!!!」
オレは騒ぎ出した彼女の口を今度は自らの唇で塞いだ。
「っ!?」
驚きながら一段と真っ赤に染まっていく彼女の頰を掴み、目をじっと見つめる。
「いいか。一回しか言わねーかんな。オレァおめーのことが…茉璃のことが好きだ。」
オレがそう言うと彼女は涙を流しながら再びオレに唇を重ねた。
「っ!バッ…おめー…急に何しやがる!!!」
「さっき急にして来たのは靖友の方でしょ!?」
変な言い合いにお互いの目を見合わせて笑い合う。
「なぁ、茉璃。オレと、その付き合ってくれるか?」
「はい。喜んで!」
「ハッ、居酒屋かよ」
オレらは笑い合いながら今度はどちらからともなく唇を重ね合わせたのだった。
fin.