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弱ペダ短編集

第6章 幼馴染の距離(巻島裕介)


オレは落ち着いた茉璃の手を引き観覧車の前に連れて来た。

「観覧車?」
「2人で話したいことがあってな。ダメか?」

オレがそう聞くと茉璃はブンブンと首を横に振る。
オレは茉璃の手を握り観覧車へと乗り込んだ。

「なんか、こういうの久しぶりショ」
「そ、それは裕介があんなことするから!」
「ん?オレは観覧車の話をしてるだけショ」

からかうと少しむくれた顔をしながら顔を真っ赤に染める。
そんな姿がたまらなく愛おしい。

「悪かったっショ」
「もうからかわないでよ」
「いや、そのことじゃなく、この前のことショ」
「っ!」

茉璃は少しうつむく。

「ねぇ、なんで裕介は遊園地なんかにいたの?」

その茉璃の質問にギクリとする。
オレは遊園地の話を聞いてしまったあの日、なんだか嫌な予感がした。
2年の頃、高橋とは同じクラスだったがあまりいい噂は聞かない奴だった。
茉璃が幸せになるなら喜んで身を引くが高橋だけは絶対にダメだと本能的に思ったのだ。

「オレの嫌な予感は当たるショ」
「フフ、なによそれ」

茉璃は笑いながらオレを見る。
茉璃の笑顔を見たのはいつぶりだろうか。
オレは堪らず茉璃を抱きしめた。

「ゆ、裕介!?」
「好きショ」
「え?」
「昔からずっと、茉璃のことが好きなんショ」

オレのその言葉に茉璃は驚きの表情を浮かべた。
そしてオレから体を話すとふわりと触れるだけの優しいキスをした。

「っ!?」
「頂上だったから」

その言葉に先ほど聞いたジンクスを思い出す。

「私もずっと前から裕介のこと好き、大好き」

その表情から茉璃が嘘を付いているようには到底思えない。

「でも、あの時泣いて!」
「あ、あれはびっくりしたのと嬉しいのとで…」
「じゃあ怒ってオレを無視し続けたのは!」
「それは裕介が忘れろなんて言うから!」

オレは一気に脱力し茉璃の肩に自身の頭を預けた。

「裕介?」
「茉璃、オレと付き合ってくれるか?」
「はい!」

オレたちはこの瞬間幼馴染という距離を卒業し恋人になった。
夕日に包まれた観覧車の中、オレたちはどちらからともなく唇を重ね合わせるのだった。


fin.
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