第5章 あいつに似た彼女(東堂尽八)
オレの名前は東堂尽八。
登れる上にトークも切れる!更にこの美形!天はオレに三物を与えた!!
箱根の山神天才クライマー東堂とはこのオレのことだ!
オレにはこの美形ゆえに学内にファンクラブがある。
クラスの女子たちもオレが登校すればキャーキャーと黄色い声をあげ近寄ってくる。
それがオレにとっての普通。当たり前のことだと思っていた。
だがその女子だけは他の女子とは違った。
その女子との出会いは3年に上がってすぐのことだった。
いつも通りファンの女子たちに手を振りながら部室に向かっているとドン!と誰かに衝突してしまった。
驚きそちらに目をやるとそこには見たことのない制服を着た長い栗色の髪の毛をした女子がいた。
「ん?キミ見たことがないな。その制服…うちの生徒じゃないとすると、他校のオレのファンか!?そうなのだろう?いやーオレも罪な男だ。わざわざ他校の女子が訪ねてくるとは!ワッハッハー!」
オレがそう言うとあろうことか彼女はオレのことを蔑んだ目で見つめ一言。
「あんた誰?ってかそのカチューシャ、かっこ悪いよ」
その場が一瞬凍りついたのがわかった。
と同時にオレの頭の中にはある人物が浮かんでいた。
だからだろうか、彼女に興味を持ったのは。
だが彼女は他校。
もう会うことはないと思っていた。
彼女との2回目の出会いは結構すぐに訪れた。
初めての出会いの次の日。
オレが在籍しているクラスの教室だった。
彼女は昨日と違い箱根学園の制服に身を包んでいる。
どうやら彼女は今日からの転校生のようだ。
さしずめ昨日はその手続きでこの学園を訪れていたのだろう。
彼女は担任に促されオレの後ろの席に座る。
「あ。昨日のカチューシャ」
そう言う彼女の表情はなんだか嫌そうだ。
今まで女子からこんな扱いを受けたことがないオレには衝撃的だった。