第4章 赤頭の彼(鳴子章吉)
何も考えずに進んでいった先はあまり人気のない見晴らしのいい場所だ。
ナンパ男がついて来ていないのを確認しつつ鳴子くんの手を離し謝る。
「ご、ごめんね。急にあんなこと言って…」
「い、いやそれは全然…」
顔を赤く染めながら俯く鳴子くんはやっぱり心底可愛い。
「鳴子くん、最近避けてるみたいになっちゃってごめんね。ちょっと自分の気持ちに整理がつかなくて」
「整理っすか?」
「う、うん。最近気がつくと鳴子くんのことばかり考えててその度に心臓がドキドキうるさくて。少し離れたらこの気持ちがなんなのかはっきりわかるかなと思って。」
「そ、それって!」
「うん。私、鳴子くんのこと好きだよ。可愛くて、かっこよくて優しい鳴子くんのことが大好きです」
私の言葉でさらに顔を真っ赤に染めている鳴子くんはいつもと違い口数が少ない。
「だから、私の本当の彼氏になってくれませんか?」
「ズルイですわ先輩。ワイが今日言おうと思ってたこと全部言うてまうんやもん。そんなもんええに決まっとるやないですか!」
鳴子くんは嬉しそうに、でも少し悔しそうにこちらを見て笑う。
「手、繋いでもええですか?」
そう照れ臭そうに差し出された鳴子くんの手に自身の手をそっと添える。
すると空にドンッ!と大きな花火が打ち上がった。
「ここ、穴場やったんすね」
「そうみたい」
私たちはお互いの顔を見て笑い会いまた花火に視線を戻すのだった。
fin.