第2章 生きてる感じ(真波山岳)
勝負を終えた山頂。
オレは高鳴る胸を抑えて拳を握りしめた。
「ハァ…ハァ…勝った…」
「ハァ…ハァ…やっぱり真波くんは早いね…一瞬羽が生えたように見えたよ」
この勝負は僅差ではあったがギリギリでオレが勝った。
「そうだ。私の好きな人、だったね」
そう言うと彼女は顔を赤らめながら少しうつむく。
「私の好きな人はね、真波くん、君だよ」
一瞬彼女の言葉が理解できなかった。
でもはっきりと聞き取れた。
「茉璃さんの好きな人が…オレ?」
「うん」
「本当に?」
「本当だよ。優しくて可愛くてかっこいい真波くんが好き」
オレはその言葉を聞いて思わず彼女に抱きついていた。
「ま、真波くん!?」
「嬉しい…嬉しいよ!茉璃さん!オレも茉璃さんのことが好きだから!」
オレがそう言うと彼女の顔が更に赤くなっていくのがわかる。
「茉璃さん、聞こえる?オレ今すごい生きてるって感じがするよ!」
「え、えと…うん。聞こえるよ。心臓の音。すごいドキドキいってる」
「もっといっぱい教えてよ、生きてるって感じること。だから、オレと付き合ってくれますか?」
「うん。教えてあげる。いっぱい。」
そう言いながらオレらは見つめ合いそっと唇を近づけた。
オレにとって最初で最後の彼女。
これからはたくさん彼女に、茉璃さんに教えてもらおう。
生きてるって感じることを。
茉璃さんの事、絶対に大切にする。
オレと茉璃さんしかいない山の頂、オレは心の中でそんなことを考えていた。