第2章 あなたに包まれたくて
琉夏と結婚して一年。
二人で住む家には琉夏の甘く優しい匂いがある。
琉夏に抱き締められるといつもこの匂いに包まれていたのを思い出す。
まだ十日程だと言うのに、もう二年も三年も会っていないような懐かしさが込み上げ、琉夏の匂いを纏った服を思わず抱きしめた。
「琉夏くん…会いたい…」
ぽろり…と口から零れた言葉がより一層寂しさを助長する。
「…。」
きっと今日も帰ってこない…。
そう思うと尚更寂しくて、琉夏の服を抱きしめたままベッドにコテン…と倒れこんだ。
このベッドで琉夏に抱かれたのは何日前だったか。
『おいで』
優しい声音で手を引かれ、琉夏の胸板に抱き込まれた温もりを思い出す。
鍛えられたしなやかな身体に組み敷かれ、ベッドから差し込む月明かりを静かに反射する瞳に射抜かれると、身体の中心から熱がじわじわと込み上げて来た。
『愛してる』
2人きりの時、しかも情事の時にしか伝えてくれない言葉を耳元で囁かれ、服を乱されながら肌に口付けられる。
普段の様子からは想像も出来ない程甘い口付けを落とされると、頭の中心がとろけてしまうようにボーッとしてくるのだ。
「…ん…琉夏くん」
琉夏の服を抱きしめながらそんな事を考えていたら、想像しただけで身体がかぁっと熱くなる。
きっと、今日も帰ってこないのだろう。
琉夏の残り香だけでも感じたくて、抱き締めていた服にそっと袖を通した。
服にくるまれると、琉夏の匂いに包まれ、まるで抱き締められているような感覚に陥る美奈子
「…はぁ…琉夏くん…」
残り香だけで、こんなにも身体が熱くなる事に恥しい気持ちになりつつも、誰もいないという甘えから、少しだけ大胆な事が出来るような気がしてきた。