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Emotional Reliable

第11章 Emotion



人の少ない夕焼け道を歩いていく。
お互い終始無言だった。
8月下旬の夕方。2人の後ろに伸びる影は二人の距離感を映し出す。



間もなく凛と汐はとある場所に着いた。
そこは汐の家がある新興住宅街の中にある開けた公園だった。
砂場、滑り台、ブランコ、噴水、花壇、どれをとってもよく整備されている。


凛は花壇の傍のベンチに腰をおろした。凛に続いて汐もゆっくりと腰をおろした。
ここまでお互い沈黙だった。
汐は困惑した様子もなく、凛が話を切り出すのを静かに待っているようだった。

凛が重く閉ざしていた口を開いた。
隣に座る汐をまっすぐ見つめて凛は切り出した。

「榊宮、その、この前はひどいこと言って悪かった」
一番最初に出た言葉は謝罪。
あの夜の一言で汐をどれだけ傷つけたことか、考えると胸がいたんだ。

一瞬驚きの色を見せた汐だが、すぐに柔らかく笑ってみせた。
「ああ、いいの。大丈夫、気にしてないよ。大会前の選手の気が立ってて情緒不安定なんてよくあることだし」

気にしてないよ、その言葉は嘘だった。
本当は今こうして凛から謝罪の言葉を聞くまでずっと考えていた。
自分が余計な口出しをしたせいで凛を怒らせてしまった。
おせっかいな奴と嫌われてしまったかもしれない。
考え始めたら止まらなかった。

「情緒不安定っつーか...」
凛はあの時の自分を殴り飛ばしたい気分だった。

「自分のことしか考えることができねぇで周りを見ることができてなかった。だから、あんな心にも思ってないことをお前に言っちまった。...本当に悪かったって思ってる」
おまえは俺のこと心配してくれてたのにな、と呟いた。

「もう、いいの。あたし松岡くんからその言葉を聞けて安心した」
「安心?」
あ...と汐は頬を染めた。つい思ったことが口から出てしまった。
続きを促す凛の視線にいたたまれなくなり、汐は観念したように本当のことを話した。

「あたし、お節介が過ぎたと思ってた。余計なこと言って怒らせて、松岡くんに嫌われたかもしれないってずっと考えてた」
「嫌いになるわけねぇだろ」
「えっ...」
「あっ...」

間髪入れずに返ってきたその言葉に汐は驚いて凛を見つめた。
その煌めくルビーのように美しい赤に映し出されたのはついさっきの汐と同じ、動揺と恥じらいだった。
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