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Emotional Reliable

第11章 Emotion


つかの間の沈黙。
向かい合ったままお互いから目線を外す。
先に口を開いたのは汐だった。

「地方大会が終わって松岡くんすっきりした顔になったね」
「すっきりした顔...」
「うん。前までは苦しそうな表情で心ここにあらずって感じだった。わざと話のつじつまが合わないように話しても松岡くんまったく気づかなかったし」

そう言って汐は花の蕾が綻ぶように微笑む。
胸の中になにかあたたかいものが染み込んでくる感覚を凛は覚えた。
凛の中で、7月の終わりで止まっていた汐との時計が動き出した。

「ほんとにお前、よく見てるな。俺のこと」
「だって、」
「〝マネージャーやってるからね〟だろ?」
凛は眉を下げ頬を緩めた。汐の知ってるどの笑顔よりも、穏やかなものだった。
胸がきゅっと締め付けられて、けれどふわふわして、とてもあったかい気持ちになった。


「榊宮に聴いて欲しい話があるんだ」
真剣な顔で切り出した。
視線が交差した。汐は何も言わない。無言で続きを促した。
一息ついて凛は、語り出した。

凛がまだ小学生の話。佐野SC時代のこと、遙を追って岩鳶小へ転校したこととその目的、遙達と泳いだリレー。
オーストラリアに留学していた4年間の話。そこで味わった挫折、しばらく競泳から離れていたこととその理由。
帰国してひとり鮫柄に編入してからの話。もう一度泳いでみようと思ったきっかけ、絶対に勝ちたい相手、県大会以降の苦悩と本当に一緒に泳ぎたかった人たち、御子柴に言われたこと、そして地方大会での出来事。


「さっきも言った通り俺は自分のことしか見えてなかった。けど、周りを見たら俺のことを支えてくれる人は大勢いた。地方大会が終わって俺はようやくそのことがわかったんだ」
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