第3章 貴方のヒーローはいるのに 私のヒーローはいない
08 わたしはいつ、あえるのかな、
目が覚めると、見慣れない天井だった。何で自分は眠っていたのだろうと、一番新しい記憶を探す。
「……シャンクスさん、」
そうだ、私はベックさんに連れられて赤髪海賊団の船に乗って、船長であるシャンクスさんの腕の刻を戻したのだ。時間があまり経っていないとはいえ、完全に失われたものを元に戻すのは難しい。それ故に新月になるほど使い、倒れたのだ。
「呼んだか?」
「……いたんですね。」
「いたもなにも、ここはおれの部屋だ。」
お前が寝ているそれはおれのだ、と指を指して言われる。
「そのまま、寝かせたのですか。」
「あァ。医務室にでも運ぼうかとも思ったが、お前の倒れた原因が明確じゃなかったからな。」
「…気を遣っていただき、ありがとうございます。」
倒れた私を動かして、もしそれが駄目だったときのことを考えそのままここに寝かせてくれたのだろう。私がそのことに対してお礼を伝えると、シャンクスさんの眉が寄る。
「……礼を言うのはこっちだ、還無。おれァお前に、腕一本生やしてもらってンだ。」
そう言って、私のいるベッドへ寄ってくる。ありがとな、と髪を撫ぜられる。私が刻を戻した腕で。
「…ヒーローを目指す身として、当然のことをしたまでです。…何故、腕をなくしたんですか?」
それくらい、聞いても良いでしょうと尋ねると、シャンクスさんは教えてくれた。曰く、以前シャンクスさんにお酒をかけた山賊がルフィくんを拐い、海へ落ちた。悪魔の実を食べたものは海に嫌われ泳げなくなるらしく、ルフィくんも例外ではなかった。そして溺れてしまい、海王類(この世界には海に危険で大きな生物が沢山いるらしい)に食べられそうになったところをシャンクスさんが助けて、腕一本を犠牲にしたそうだ。
「…ルフィくんの、ためだったんですね。」
「あァ、友だちを助けるためだ。それくらい安いもンだろう。」
この人は、誰かの為に命を懸けることができるひとだ。
「……あなたは、ルフィくんにとってのヒーローですね。」
きっと彼は、麦藁帽子の似合う、このひとに憧れるのだろう。たくさんの人が、オールマイトに憧れるように。
「おれにとってのヒーローは、お前だよ、還無。」