第3章 貴方のヒーローはいるのに 私のヒーローはいない
06 みんなひーろーをさがしているの、
一度個性を見せたあの日から、シャンクスさんは私の目を見たいと願ってくることが増えた。私は個性を使う際、目に変化が現れる。普段は闇に包まれた夜のような、暗く深い海のような、暗い藍色の目。そこに月が浮かぶのだ。夜空に浮かぶ、次のように。(シャンクスさんは、夜の海に浮かぶ月のようだと言っていた。)そしてその月が、能力の制限である。シャンクスさんたちには満月しか見えなかったことだろう、服を乾かすくらいの刻の遡りならば。その満月がどんどん欠けてゆくことで私の能力のキャパなのである。最後、新月になったとき、けして能力が使えなくなるわけではないが血の涙に加えて酷い頭痛や眼痛等が起こるのだ。
だからこそ、私は長く満月でいられるように個性を伸ばす必要がある。ヒーローになったとき、パナケイアの名前に負けないように、たくさんの人を救うんだ。
「そして本当に、君たちは怪我が多いね…。」
シャンクスさんから逃げ果せた私は、いつもの山へと来ていた。
「還無が治してくれるからいーんだ!」
「何度やってもらっても、すげーよなぁ…」
そして、エースくんとサボくんの怪我を治していた。彼らは本当によく怪我をする。正直、親御さんは何をやっているんだとも思うが。まともな家じゃないのだろう、と勝手に納得する。
「私がいつまでもここにいるとは限らないよ?」
そう言うと、明らかに驚愕した表情をする2人。なかなかどうして、懐かれたもんだ。最初の頃エースくん、私へのあたり酷かったのに。
「いてくれよ還無!」
「そうだそうだ!俺らを見捨てるのか?!」
「見捨てるもの何も…」
勿論子供である彼らに、私が敵意を向ける必要もなく。私のように、なってほしいわけでもなく。だからこそ、傷を治してあげていた。求められる者に、求められなくても、手を差し伸べるのがヒーローだって、確かオールマイトがヒーロー基礎学で話していた気がする。
「……私も、やることがあるの。」
君たちが海に出たいと話していたように。
彼ら2人は以前、夢を教えてくれた。そのときは2人の話を聞いただけだったけど。
「ヒーローにね、なりたいんだ。」
2人は首を傾げている。それはそうだろう、この世界にヒーローという職業はない。書物に出てくるだけだと聞いた。