第3章 賞金首
隊長らしき憲兵が、樽を蹴飛ばし始めた。
樽の中に入っていた物が散乱する。騒ぎを聞き付けた店主が出てきた。
「な、何をするんですか!売り物なのに!」
「やかましい!こんなところに置いているのが悪い!」
「こんなところって!敷地内に置いてあるのに、どこが悪いんですか?!」
「ええい、邪魔立てすると逮捕するぞ!」
「そんな理不尽な!」
「行くぞ!」
「「はっ!」」
憲兵は去って行った。
カラ松は大きな箱の後ろから、○○は天井の梁から出てきた。
「すまない、店主」
「え?!あ、あんたらは?!」
「こんなんじゃ足りないかもだけど、詫びだよ」
○○は店主に金貨を一握り渡した。
「お、おお…!すまないね。それにしても憲兵は、海賊以下だ。あれで市民を守ってるって言うんだ、とんだお笑い草だよ」
「全くだよ。守ってるのは、貴族だけだからね」
「ああ。我々平民は、どうでもいいんだ」
「その平民のおかげで貴族も生活できてるってのにね」
「これ、持って行きな。上等の酒と、こっちは野菜だ」
「いいのかい?」
「ああ、かなわんさ。これだけ金貨があれば、いい店ができる」
「すまないね」
「まだその辺に憲兵がいるかも知れん。着替えて行け」
しかし○○は、断った。
「この格好は、あたしのポリシーなんだ。変装なんてごめんだよ」
「そうか。捕まるなよ?」
「ありがと」
樽は思った以上に重かった。
「俺が持つ」
カラ松はヒョイ、と樽を2つとも、肩に掲げた。
「他の連中が心配だ。戻るよ」
「ああ」
船に戻ると、オソワズたちが待っていた。
「お前たち、無事だったか!」
「船長、遅いから心配しましたよ」
「すまないね。憲兵に見つかっちまったんだよ」
「その樽は?」
「もらったのさ」
カラ松が樽を置くと、早速チョロカンが運ぼうとする。が、持ち上がらない。
「え?!これを肩に掲げて?!」
トドクスも持ち上げてみた。やはり、びくともしない。
「カラ松、力持ちだね!」
「よいしょー!」
ジュウシアムはヒョイと持ち上げた。
「「お前は、別格!!」」
「あははー!」
「よし、出航だ!」
「「アイアイサー!」」
港から遠ざかろうとした時。
「待て、レグルス海賊団!!」
海軍がやって来た。