第2章 super moon
「そんなことがあったのか……」
「けど、もう誰も死なせやしないよ!カラファーのためにもね」
空には大きな月が出ていた。スーパームーンだ。
「ああもうそんな時期か。あんたらは先に食べてな。用意してくる」
「イエッサー」
イチアルがカラ松に近づいてきた。
「お前、ラッキーだよ。初日から船長のあれが見れるなんてさ」
「あれって?」
トドクスも、ニンマリ笑う。
「まあ、見てのお楽しみだよ」
しばらくして、薄衣を身にまとった○○が姿を現した。
「!!」
思わず息を呑むカラ松。
薄衣の下は素肌だった。月明かりに照らされ、薄衣が輝きを放つ。透けた素肌が艶やかに光る。
○○は舞い始めた。
「ミューズだ…」
女神だと思えるほどに神々しいその舞いは、カラ松のみならずオソワズたちの目を釘付けにする。
○○が両手を広げると、海から無数の、大小様々な大きさの光が浮かび上がり、○○の周りを取り囲み始めた。
広げた両手を空に向かって伸ばせば、光はゆっくりと空へ登っていく。
「船長はすごいんだよ。ああやって、海で命を落とした全ての魂を、天に昇らせるんだ」
「カラファーも遺体だけは取り返して海に流したから、あの舞いで天に昇っていったんだ。だから、カラ松がカラファーじゃないって、思ったんじゃないかな」
「でもあの時、カラファーの魂は、ずっと船長の周りを回ってたね」
「ああ。なかなか昇らなかったな。船長が心配だったんだよ、きっと」
「カラ松がため口でも怒らないのは、まだカラファーと重ねてるからだろうな」
舞いが終わり、○○が船内に戻り、着替えてから宴の席についた。
「大丈夫か、○○。冷えたんじゃないか?」
カラ松が自分の上着を○○の肩にかけた。
「…そういうとこも、そっくりだね」
「俺も、オソワズたちの仕草がブラザーたちにそっくりで、勘違いしそうになる」
「でもね、やっぱり違うんだよ。カラファーはすぐ泣いたりしなかった。どっちかって言うと、すぐ打開策を考えてた」
「そうですね。どうすればいいか、どう伝えればいいか、どう動けばいいか、その時に必要な行動を、考えてましたね」
「………その時に必要な行動…」
「泣いたって始まらない、解決しない。よく言ってたよ」