第1章 異世界へ
「カラ松も嵐が来たら、中に入れよ」
「ああ、わかった」
「今のうちに錨を降ろしておきな」
「アイアイサー!」
しかし本当に嵐が来るのかと思う位の快晴。
「チョロカン」
「なんだ?」
「どうして嵐が来ると、分かるんだ?」
「あの雲を見ろ」
言われて見ると、ひとつの雲があった。
「嵐の前触れだ」
「そうなのか」
カラ松はその雲を、じっくり見た。雲はモコモコしたような形だ。
そのうち風が出てきた。
「雨下ろしの風だな」
○○も空を見上げた。甲板を見渡し、置いてある物を片付ける。カラ松もそれを手伝おうとしたが、止められた。
「お前は厨房を見てこい」
「わかt……アイアイサー!」
厨房に行き、船が揺すられても大丈夫なようにする。
「これで大丈夫かな」
「どうだ、カラ松」
「あ、○○」
○○は厨房を見る。
「へえ、ちゃんと出来てるな」
「これで大丈夫とは思うんだが」
「ああ、上出来だ」
やがてどんどん空が暗くなり、風も強くなっていった。白波もたち始め、船が大きく揺さぶられる。
「転覆しないだろうな?!」
「見くびってもらっちゃ、困るぜ。これまで何度も、これ以上の嵐をかいくぐってきたんだ」
「とりあえず、どこかに捕まってろ!」
「アイアイサー!」
どのくらい時間が経っただろうか。嵐は収まりそうにない。
「……ブラザーたち、どうしてるかな…」
ふと口に出た。
あんなことをされても、自分の兄弟だ。心配でない訳がない。兄弟たちも同じように、心配してくれているだろうか?そう思った。
嵐が収まり、○○は船の見廻りを始めた。
「カラ松、大丈夫か?」
「ああ」
「あは!嵐スパイラル!」
「怪我はない?」
「大丈夫だ!皆は?」
「もちろん、平気!屁のカッパ!」
「僕も大丈夫だよ。カラ松も優しいんだね」
「ブラザー…いや、仲間を想うのは、当然だろう」
○○が甲板から声をかけた。
「皆、来い!空が綺麗だぞ」
甲板に出たカラ松たちは空を見上げ、歓声をあげた。
「おお…!」
まるで洗い清められたかのような、澄んだ空。
「嵐の後の空は、格別だな」
「カラ松」
「えっ」
「ごちそうをたくさん用意しな。宴をやるよ」
「ヒャッホーーーー!」