第1章 異世界へ
「あたしは船長の○○。こいつら、兄弟なんだ」
「え、5人なのか…。6人じゃないんだな…」
おそ松たちそっくりな5人に、あの日の記憶が頭をよぎる。自分よりも梨を、睡眠を選んだ兄弟たち。
「うっ……うう……ブラザー…」
「ほら、また泣く!泣いたってしょうがないだろ!」
「それより、名前は?」
「俺は、カラ松」
「カラ松か…。そっくりだな…」
「さて、カラ松。あんたはこれからどうするんだ?」
「…行くところもないし、できれば世話になりたい」
「なら、教えなきゃな。レグルス海賊団訓示を全員、斉唱!」
「「ひとつ!我々は平民を守るべし!
ひとつ!我々は仲間を守るべし!
ひとつ!働かざる者、食うべからず!
ひとつ!満月の夜は宴をすべし!」」
「てなわけだ。カラ松も何か、仕事しな」
「でも、何をすればいいんだ?」
「それは自分で決めるこった。得意なものでいいんだ、何かあるだろ?」
「じゃあ、料理をするよ」
「それは助かる。コックがいなかったからな。ただ、朝は早いぞ。覚悟しな」
「わかった」
「オソワズ。調理場に案内しな」
「アイアイサー!」
オソワズに連れられ、調理場に入る。様々な調理器具が並んでいた。
「へえ、結構揃ってるな」
「なあ、カラ松。腹減ったから、何か作ってくれよ」
「有り合わせでいいか?」
「おう!」
カラ松は辺りを見回し、適当な物を作った。
食堂ではすでに、全員が揃っていた。
「待ってました!」
「ホントに有り合わせだぞ」
「サンキュー、カラ松」
「いっただっきまーす!」
「……おお、これはうまいな!」
「やるなカラ松」
「美味しいよ、カラ松!」
「ありがとう、カラ松!」
口々に礼を言う仲間たち。顔は同じでも、やはり兄弟とは違う。ここではジュウシアムやトドクスまでが、自分を名前で呼ぶ。イチアルも塩対応ではない。
輪の中に入れている自分が、そこにいる。
「心地いい…」
やっと自分の居場所を見つけた、そんな気分にさせてくれる。
食事の後、チョロカンが空を見上げた。
「ジュウシアム!帆を畳んでくれ!もうすぐ嵐が来る!」
「ほいほいほーい!任された!」
ジュウシアムがマストに登り、帆を畳んでいく。
甲板に置いてある物を船内に入れていく。