第8章 カラ松の帰還
以前なら、胸ぐらを掴んだ時点で泣いて目を反らせていたカラ松が、真っ正面から自分を見ていることに驚く一松。
「クソ松、お前……」
「一松。殴りたければ殴ればいい。だが、俺はもう泣かない。泣いても何も解決しないからな。今までお前をイラつかせて、すまなかった」
胸ぐらを掴んだ一松の手が震える。
「クソ松…………。カラ松兄さん…!!僕の方こそ、兄さんをたくさん傷つけてごめんなさい…!!僕はただ、自分に正直に生きられる兄さんが、うらやましかっただけなんだ。でもどう接すればいいか分からなくて…」
カラ松は一松の頭を撫でた。
「もういいんだ。兄さんと呼んでくれて、それだけで充分だ」
「カラ松兄さん!!」
一松を抱きしめながら、カラ松は考えていた。
「方法はひとつじゃない、色々やってみて駄目なら、そこで初めて諦める」
「カラ松、何を言ってるんだ?」
「カラファーの教えだ。ひとつの結論しか出せていないからな。マミーとダディーを連れて行くのは危険だが、俺たちで守るという選択肢もある」
「みんなで守ろう!!」
六つ子の心が、ひとつになった。早速両親のところへ行く。
「父さん、母さん!!俺たち、海賊になる!!」
「へ?」
「一緒に来てくれ!マミーとダディーは、俺たちが守る!」
そしてレグルス海賊団の訓示を、声高らかに唱和するカラ松。
「レグルス海賊団訓示!
ひとつ!我々は平民を守るべし!
ひとつ!我々は仲間を守るべし!
ひとつ!働かざる者、食うべからず!
ひとつ!満月の夜は宴をすべし!」
「でもさ、こんな大人数が押し掛けて、大丈夫なのか?」
「大丈夫さ、ダディー。海軍の船だったんだからな。部屋はたくさんある。それに、俺の愛する人に、紹介したいんだ」
「カラ松。母さんは反対よ」
「マミー…」
「私だって戦える。守られるだけなんて、反対だからね」
「マミー!」
「とりあえず今日は、家でご飯を食べようじゃないか」
「料理は任せてくれ!」
カラ松は家にある材料で、いくつか作った。
「誰か運んでくれ!」
「僕が運ぶよ」
料理を運ぼうとしたのを止めるカラ松。
「一松フレンズに、別れをしておけよ?」
「うん。猫缶と煮干し、全部持って行くよ」
「「いただきまーす!!」」