第5章 カラファーとカラ松その2
「カラファーの偽物め!お前も処刑してやる!公開処刑だ。さぞ大勢が見に来るだろう。あの時は、他の海賊の処刑もあったから翌日になったが、今回は用意がいる。いつになるか、楽しみだな」
そう言って、看守は笑いながら去って行った。
「はーーーーーー」
深いため息をつき、壁にもたれるカラ松。
「ブラザー………。俺はもう、帰れないかも知れない…。ぐすっ」
自分の境遇を嘆く。
『おい』
「えっ?!誰だ?!」
『大きな声を出すな!俺は今、お前の心に語りかけている。お前も心で話せ』
自分とよく似た声。思い当たるのは、ただ一人しかいない。
(お前は、カラファーか!)
『そうだ。俺はあの日、○○の御霊送りで天に昇るはずだった。だが、思った以上に○○が俺に未練を残すあまり、昇れなかったんだ。それよりもお前。カラ松だったか?泣いているだけでは、何も解決しないぞ!』
(だが、どうすればいいのか…)
『そんな弱気で、どうする?!いいか、今○○たちも、お前を助けようと必死になっているはずだ。チョロカンならここの場所を割り出せる。処刑までまだ日はあるからな、やれることはあるはずだ。先ずはそこに落ちている石で、この部屋の壁や床を、くまなく叩いてみろ』
カラファーに言われた通り、壁を叩いてみる。すると外側の壁の音が、違う場所を見つけた。
『よし。その場所を、思い切り蹴ってみるんだ』
カラ松は少し離れて呼吸を整え、足に渾身の力を込めて、蹴ってみた。
見回りにきた看守は、カラ松が悔しさのあまり地団駄を踏んでいるように見えるようだ。特に咎めることもなく、鼻で笑って去って行った。
『いいか、カラ松。泣くだけなら簡単だ。だが、それでは何も変わらない。周りが変わるのを待つだけじゃ、駄目だ。自分から変わろうとしなければ、周りも変わらないし、自分自身も成長しない。○○を愛する気持ちがあるのなら、先ず変わろうとしろ。そうでなければ兄貴たちも、○○をも危険にさらしてしまう』
(○○が見ているのはカラファー、お前だ。俺じゃない。だが、俺は○○の特別でありたいと思っている。泣いていても始まらない、だろ?)
『その通りだ。カラ松、すまないがしばらくの間、お前の体を貸してくれ。○○を守るために』