第4章 カラファーとカラ松
カラ松はいつか釣り堀で、おそ松に同じようなことを言われたのを思い出した。
『お前は変わらなくてもいいって。周りの感覚が馬鹿になればいいんだよ』
「………兄貴…」
「何だよ、カラファー」
オソワズの仕草も、しゃべり方も、笑い方も、おそ松そっくりだ。何が違うのか、カラ松は考えた。そこへイチアルが戻ってきた。
「トドクス、甲板掃除終わったよ」
「はーい。じゃあ僕、お洗濯してくるね」
「手伝いマッスルー!」
「ありがとう、ジュウシアム兄さん」
「!!こういうところか!!」
カラ松は気づいた。自分たちとオソワズたちの相違点を。
自分たちは家でだらだらと過ごすのみで、家事の手伝いすらしようとしない。だがオソワズたちは、自分の役割分担をきちんとこなしている。やる気に満ちた、男の顔をしている。
しかも彼らは全員、賞金首だ。常に命を狙われている。幸い似顔絵は全く似ていなかったが。
「もうひとつ、聞かせてくれ」
「今度は何だ?」
「なぜ海賊になったんだ?」
「俺も○○も普通の平民でさ、同じ酒場で働いてたんだ。オーナーが○○でな」
「そこに海賊団が来たんだ。海賊って言っても、いきなり暴れたりはしない。けど、そこへ憲兵が乗り込んで来て、他の客もいるのに銃で打ち始めたんだ。あっという間に店の中がめちゃくちゃになった」
「んで、何でか俺たちも海賊団の一員だと思われて、イチアルが捕まった。それを助けたのがカラファーだ。イチアルを捕まえた憲兵を殴り飛ばして、代わりに自分が捕まった。ただ弟を助けようとしただけなのに海賊だと言われて、次の日には公開処刑だ。結局カラファーは処刑され、酒場を追われた俺たちは、○○と一緒に、港に停めてあった海軍の船をかっぱらったんだ」
「それがこの船か!」
「そ。んで、そのまま海賊になったって訳」
「俺たちの賞金は、その時についたんだ」
オソワズは改めて、カラ松に聞いた。
「お前、本当にカラファーになんの?」
「ああ。俺なりのカラファーを、演じてみせる」
「まあ、頑張れば?」
「ああ、やってやる!カラファーの心の強さを、身につけるさ!」
とは言うものの、元々泣き虫なカラ松にはなかなか難しい課題だったが、『カラファーは打開策を探す』という言葉を思い出し、それに取り組んだ。