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夢で見た世界2/金色のコルダ

第1章 君の音色/志水


最近、日野先輩の音が少しづつだけど、変ってきています。


それは、とても綺麗で優しくて…


──どことなく、切ない。


僕は、その音が好きだなって思ってて…


けど、その音を聞くと…


“ある人”を思い出すんです。


その事をリリに言ったら、


『──なるほど!お前にも近いうちに“コノ楽譜”が必要になるかもしれんな!』


と、渡されたのは、エドワード・エルガーの“愛の挨拶”。


その時は、まだ意味が理解出来ないでいたけれど…


今日、“少し”解った気がしました。





゚・.。・♪゚・.。・♪゚・.。・♪゚・





いつもと同じ放課後。

違ったのは僕が練習室へ行くのではなく、屋上へチェロを持って行った事でした。

今日は天気が良くて、風向きも緩やかで…

教室から見えた夕日が余りにも綺麗だったから…

何だか、居ても立っても居られなくて。


多分…直感でしょうか。


“音が聞こえる”


そう、体が感じとっている気がしたんです。


僕はチェロを背に担ぎ、せっせと屋上へと続く長い階段を登りました。

すると、やっぱり音が聞こえてきて…

無意識でしたが、踊場で足を止めて瞳を閉じると、流れる音を辿りました。

音は、僕が探す“降ってくる”モノとは違っていて、実際に誰かが楽譜を見て“奏でている”モノでした。

そして普段、聞き慣れた楽器の音色。



「…チェロだ。」



まだ、あどけない音。

けれど精一杯、何度も何度も同じ所を奏でる音色は、とても誠実で健気です。

僕は足早に残りの階段を登り切ると、屋上の扉を開けました。

光と共に差し込んだ先…

──そこには、

夕日に朱く染められながら、チェロを抱える邑林望さんの姿でした。
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