第1章 小さな恋人
「わーい!ありがとう、カラ松!」
帰り道、おそ松はカラ松の肩をつかまえた。
「ちょっとカラ松くーん。よかったの、あんな約束してぇ?」
「ふっ。ああでもしないと、帰してくれそうもなかったからな」
「それだけ?」
「あの子がかわいくて、仕方ないんでしょ?」
「それもある。あの子だけだからな、俺をちゃんと見てくれる子は」
「あの子と結婚する気なんて、ないんでしょ?」
「そのうち忘れるさ」
「俺たちがあの施設に行く限り、覚えてるよ?」
「責任取れよ、クソ松」
兄弟たちにさんざん言われて、ようやくカラ松は、自分がしたことの浅はかさに気づいた。しかしすでに、後の祭り。一度あげた物を返せなんて、言える訳がない。
他の誰かと結婚すれば、諦めてくれるだろうかとも思ったが、○○が泣くのを見るのは辛いし、かわいそうでならない。両親がいればまだしも、○○は孤児だ。院長の話では、捨て子だったそうだ。親の愛を知らないのなら、優しいカラ松に依存するのは当然かも知れない。
「指切りしたからな。責任取るか」
10歳は年の違う小さな恋人を、カラ松は複雑な想いで受け入れた。