第29章 はじめてのデート
デート当日。
私は巻島さんとの待ち合わせ場所に駆け足で向っていた。
昨日の夜、やっとこの服で出掛けようと決めたはずなのに、朝になって本当にこの服でいいのか迷ってしまい家を出るのが予定よりも少し遅れてしまったのだ。
巻島さんの服装はなんというか…独特だ。
でもそれが何故か最高に似合っていてかっこいい。
そんな彼の横に並ぶのだから下手な格好はできない。
そう思うとなかなかコーディネイトを決められないものだ。
前の東京観光の際も悩んだが、今回はその時より更に悩んだ気がする。
それはそうだ。
待ちに待った巻島さんとの初デートなのだから。
待ち合わせ場所につくと、巻島さんが時計台に寄りかかりながら携帯をカチャカチャとスライドさせている。
結構待たせてしまったのだろうか。
『ごめんなさい。お待たせしました!』
「いや、そんな待ってねぇショ。てか俺も今来たところショ」
巻島さんはそう言うと照れ臭そうに顔をそらしながらこちらに左手を差し出した。
「その、なんだ。はぐれたらいけない、ショ」
そらした横顔を覗くと耳まで真っ赤になっていることが分かる。
そんな巻島さんの事を愛おしく思いながら、自分の右手を差し出された巻島さんの左手にそっと添える。
すると巻島さんは手に力を込め私の手をギュッと握った。
私もそれに応えるように手に力を込めると巻島さんは満足げに駅の方へと向かって行った。