第19章 温かな感触。(巻島目線)
富永への東堂からの告白とデートを賭けた長瀞山ヒルクライムレースが終了した。
結果は僅差ではあったが俺の勝ちだ。
東堂に申し訳ない気持ちがないわけではないが、とにかく負けるわけにはいかなかった。
そんなレースの帰り道、俺と東堂はいつの間にか富永の肩に寄り掛かり寝てしまっていたようだ。
頭を退けて謝ろうと目を開けようとすると、フワッと俺の髪の毛に富永の手が触れていた。
その行動があまりにも愛おしく、ついどうしたのか気になり声をかける。
すると、富永はすかさず手を離し俺へと謝罪した。
急に富永の体温が消えた頭がなんだか妙に寂しく感じ、俺は富永の手に自身の手を添えてまた頭へと持っていく。
普段、誰かに触れられることが苦手な俺だが、富永の手がまた頭に触れた瞬間とても心地よく、落ち着く気がした。
そしてまた、夢の中へと入って行くのだった。