第17章 長瀞山ヒルクライムレース(巻島目線)
スタートの合図と共に全選手が一斉に出走する。
急に飛び出して逃げ切りをしようと考える連中もいるが、これはヒルクライムレースだ。
駆け引きをして脚を使ってしまったところで休ませられる場所などない。
序盤で俺らを抜き、優越感に浸っている奴等もいるが気にしない。
そういう奴らは後々へばって落ちてくるのが見えている。
俺らは自分のペースを護りペダルを回していく。
「そういえば東堂、さっき言ってたデートってどういうことショ?」
俺はまだ余裕のあるこの序盤で気になっていた事を聞いてみた。
「あぁ、明日と明後日の2日間で浅草やスカイツリー、定番テーマパークである夢の国やシャチがいる水族館など様々な所に観光に行ってみたいと思ってな!せっかくならと茉璃を誘ったのだ!」
「流石に2日間でそれ全部は回れないショ」
「ワッハッハ!そんなことはわかっているさ!その中から茉璃に選んでもらおうと思ってな!登れる上に気遣いもできる!更にこの美形!天は「うるせぇショ」
俺は東堂の言葉を遮り頭をフル回転させどうにかデートを阻止する方法を考える。
(クッソ…たぶんこれしか方法はねぇショ)
そして俺はある一つの答えに辿り着き東堂に提案をした。
「俺も連れて行け」
「ん?どこにだ巻ちゃん?」
「俺もその2日間のデートとやらに連れて行けって言ってるショ」
「んなっ!?それではデートではないではないか!」
東堂の言葉はもっともだ。
俺だって普段ならこんな事は絶対に言わない。
だがどうしてもデートというものを阻止したかった。
「んなことわかってるショ。だから俺が勝ったらだ。この勝負、お前が勝ったら富永と2人でデートをして告白でもなんでもすりゃあいい。だが俺が勝ったら2日間、2人きりにはさせねぇショ。」
「それ程真剣という事なのだな、巻ちゃん。よしわかった良いだろう。」
そんな話をしていると随分と他の選手を抜いてきたらしい。
先頭から2、3番目という所まで上がって来ていた。