第12章 幼馴染みからの電話
しばらくすると静かになったので受話器を耳に戻すと、流石は幼馴染みだ。私が受話器を離して全く聞いていなかった事に気がついていたようだ。
〈茉璃といい、巻ちゃんといい、この俺に少し冷たいのではないか!?〉
巻ちゃんとは一体誰のことだろう。彼女でもできたんだろうか。と呑気なことを考えていると尽八から思いもよらない言葉を投げかけられた。
〈とにかくだ。土曜日から2泊、富永家で世話になる事になっているからな。日曜日と月曜日は俺とデートをしようではないか〉
私の聞き間違いだろうか。
いや、確かに尽八は2泊うちでお世話になると言った。
『え、待って、泊まっていくってこと?2泊?』
〈うむ。もう茉璃のお母様とは話はつけてある。よろしく頼むぞ〉
幾ら幼馴染みとはいえ、高校生の男子が自分の家に泊まりに来るなんて!と母を睨みつけてみるが、うふっとこちらを見ながら意味ありげに笑い、すぐに夕飯の支度へ戻る。
もうこの人たちの中では決定事項なのだろう。
私は諦めモードで尽八の話に話題を戻す。
『で、デートって?』
〈うむ、そのままの意味だ。東京観光をするにはそちらからの方が効率的だからな!〉
つまりは東京観光をしたいから付き合えってことだ。
私は少しため息を吐きながらスケジュール帳で部活が無いことを確認し了承した。