第11章 君と初めての峰ヶ山(巻島目線)
山頂のすぐ下にある駐車場の端。
俺らはそこで一旦休憩しながら雑談をする事にした。
俺が腰掛石に座ると、富永は笑顔で目の前に立つ。
そして意を決してずっと気になっていたことを聞く事にした。
「そういえば…富永は、その…手嶋とはどうなんショ?」
俺が質問をすると、富永はわけがわからないといった表情を浮かべる。
「その…お前ら仲良さげに見えたショ。だから付き合ってるのかと…それか…好き…とかなのかな…ってな…」
今度は丁寧に質問をすると、彼女は少し苦しそうな表情を浮かべながら手嶋との関係を全力で否定した。
彼女の表情からしてきっとこの言葉は嘘ではないのだろう。
たぶん富永のことを好きなのであろう手嶋には若干同情するが、俺は心底ホッとした。
(あぁ、もうすぐ時間か。)
そんなことを考えながら俺は自分の座っている腰掛石の端に座り直し、空いたスペースを掌で叩く。
すると、彼女は照れた表情を浮かべ、少し俯きながら俺の横に腰掛ける。
そんな彼女を可愛いと思いながら俺は夕陽を指差しそちらを見るように促した。
「ほら、見てみるショ」
『え?…うわぁ、綺麗。』
「ここの夕焼けは最高なんショ」
目をキラキラさせ夕焼けを見るその横顔をしばらく見つめる。
(あぁ、俺は…)
その気持ちには前から薄々気がついていた。
きっと一目惚れとかいうやつだったんだろう。
そして直に接するようになってその気持ちがどんどん大きくなっていった。
だから富永と距離の近い手嶋に嫉妬していた。
(この子のこと心底好きになっちまってるみてぇだ。ただ、伝えるタイミングは今じゃねぇ。まだ心の中にそっとしまっておくショ)
そう思い、俺は夕焼けに視線を戻す。
すると、横から富永の
『好きなんだな…』
という呟きが聞こえた。
驚き彼女を見るとなんだか焦ったように
『え?あと、違くて…その、ロードが!!坂を登るのが好きだなーと思いまして、アハハ…』
なんて言う。
(クハッ。こんな時までロードの話かよ)
俺は心の中で少し笑いながらまた夕焼けを見つめるのだった。