第11章 君と初めての峰ヶ山(巻島目線)
職員室に呼び出され部活に遅れて行くと、部室の前に見覚えのないリドレーのロードバイクが置いてあった。
(白い車体に青、紫、橙、黄のさりげない差し色。可愛らしいデザイン。たぶん富永のロードショ。)
そんなことを考えながら部室に入ると、他の部員たちはすでにメニューをスタートさせているようで、俺たちのドリンクの準備をしている富永の姿だけがあった。
「外にあったロード、お前のか?」
何を話していいのかわからず、そんなわかり切ったことを質問してしまう。
『そうです。マネージャーの仕事にも慣れてきたし、今日は金城さんの許可が頂けたので少し走りに行こうかと思いまして』
そう答えた彼女に俺はチャンスだと思った。
結局、彼女と手嶋との関係をずっと聞けずにいたからだ。
すかさず俺は彼女を峰ヶ山に誘う。
この高校にクライマーは俺ただ1人。
だから基本的には誰かを誘うということはなかったが、この1ヶ月で彼女がクライマーだということが判明した。
だからきっと峰ヶ山に行ったとしてもただのサインリングにはならないだろう。
彼女が了承してくれた事に少しの喜びと少しの不安を感じつつ俺は支度を始めた。