第81章 旅立ちのとき(巻島目線)
再び電話が鳴り響く。
「ったく、もう飛行機の乗るってのに、どんだけギリギリにかけてきてんショ、東堂。」
<ワッハッハッハー!友の船出だからな〜祝わねばならんと思ってな〜!>
相変わらずのテンションに思わず笑みがこぼれる。
さっきの茉璃との会話がふと脳裏をよぎった。
ーーどうせ”友の船出だから祝わねばならんと思ってな!”とか言いだすんだよ?
あの時の茉璃の笑顔が浮かんで、少しだけ胸が温かくなる。
「クハッ!さすが幼馴染だ!」
<ん?なんの話だ?>
「気にすんな。ただ…お前も変わんねェショ」
<当然だ!登れる上にトークも切れる!さらにこの美形!天はこの俺に三物を与えーー>
「うるさいショ」
<酷いぞ、巻ちゃん!時に、見送りはどうした?>
「さっき、茉璃と別れたところショ。他の奴らには、見送りにくるヒマあったら練習しろっつったからなァ」
くだらない話や後輩たちのことなどいくつか交わした後、ふと言葉を選ぶように口を開く。
「…なぁ、東堂」
<なんだ?>
「茉璃のこと、気にかけてやって欲しい…ショ」
一瞬東堂の声が柔らかくなる。
<あぁ。無論そのつもりだ。…でもな、茉璃は俺たちが思うよりずっと強いよ>
「…そうだな」
短い沈黙の後、俺たちは笑い合った。
<じゃあな、巻ちゃん!こっちのことは任せておけ!>
「あぁ、頼んだ」
通話が切れる。
静寂が戻った空港のロビーで胸の奥に小さな熱だけが残る。
携帯をしまい、深く息を吸い込む。
ーー行くか。
搭乗口へと足を進めながら、もう一度だけ茉璃の笑顔が脳裏に浮かんだ。
その笑顔を胸に刻み付け、静かに飛行機へと乗り込んだ。