第73章 親友へ(巻島目線)
夜空に大輪の花が咲き乱れ、無数の光が辺りを染め上げる。
周りの人々は夢中でその花火を見上げていたが、俺たちは違った。
その美しさには目もくれず、ただただお互いの顔を見つめ合うだけだった。
「…笑うしかないな。俺は…てっきりーーーぬか喜びをしていたよ」
「…すまねェ」
俺はただただ謝ることしかできなかった。
もう行くって決めちまった。
その覚悟を胸にでここまで来ている。
覚悟を伝え、東堂の横を通り過ぎてバス停へ向かおうとしたその瞬間、さっき食らったあの説教を思い出す。
「楽しい時間を作り上げるのは、取るに足らない駄話だ!」
もし振り返ったら、もう少しだけ駄話を交そう。
そう思い、俺は足を止めた。
すると、東堂がまるで見透かしたかのように振り返る。
目の前の東堂は驚いたような表情を浮かべていた。
最終の新幹線まであと40分ほど。
俺たちは時間が来るまでひたすら話し込んだ。
「行ってこい。俺は背中を押すよ」
急にそう言った東堂の顔は笑っていて、俺を見送るその表情はどこか優しかった。
俺は手をヒラヒラとあげて、その場を後にした。