第70章 残された時間
部室を出て行く足音が一つ、また一つと遠ざかって行く。
純太は私に何かを言いたそうだったが俯いたまま後片付けをする私に声をかけられなかったのか青八木くんに連れられ帰って言った。
そして誰もいなくなった部室に残ったのは私と裕介さんの2人だけとなった。
『ダメだね、私。覚悟…決めてたはずなんだけどなぁ…』
思わず溢れた言葉が胸に刺さる。
不安と寂しさが押し寄せ涙がこぼれそうになる。
その時、背後から温かい体が私を包み込んだ。
思わず胸に顔を埋め、声を押し殺して泣く。
「必ず、いつか必ず茉璃のこと、迎えにいくショ。だから。少しの間、待っててくれるか?」
その言葉に涙混じりに頷く。
『うん…!前にも言ったでしょ?何年離れ離れになったとしても待ち続けるって』
くしゃくしゃになっているであろう涙混じりの笑顔で私は必死に裕介さんを見上げた。
その視線を受け取った瞬間、優しく微笑む裕介さんの顔が近づいてきて唇が重なる。
心の奥まで彼に触れられるような感覚に胸がキュッと締め付けられる。
静かに、でも確かに2人だけの世界がそこにあった。
夕陽の光も部屋の空気も全てが温かく包み込んでくれるようで、私はただ裕介さんの胸にしがみついたまま、少しの間余韻に浸っていた。